うだつが上がらない話・・

遊悠人

2014年08月23日 17:41



 遊悠人は、月に一度「タイムス住宅新聞」で連載のエッセイ
書いている。今月は「うだつが上がらない・・」のタイトルで書いた。
日頃よく使われる言葉に、建築専門用語から派生した用語が
意外に多い。
 ご一読ください。

         うだつが上がらない・・
               文・写真/照屋寛公
 建築関する用語には、本来は建築専門用語から変化して普段の生活用語として使われている言葉が意外に多い。
『うだつが上がらない』という言葉がある。故事ことわざ辞典をひも解くと「いつまで経っても出世しない、生活が向上しないことのたとえ。また、身分がぱっとしない、幸せになれないこと」とある。「うだつとは」本来、建築用語で屋根の隣家に接する部分に天高く立ち上がった防火壁の事。立身出世して財をなし、蔵を造るほどになると、隣家からの延焼を避けるため防火壁を造ったというのである。当時の人々は、その防火壁の大きさや立派な具合を互いに競ったのかもしれない。
 同じような用語が、まだある。五月に伊勢神宮をお参りする機会があった。内宮の鳥居をくぐる前に、五十鈴川を渡る宇治橋がある。橋の脇に木製の杭が水面に打ち込まれている光景が目に入った。同行の面々で話題になった、この杭は何のためにあるのかである。川下側にはなく川上側にのみある、それが存在意義に関係あるのではないかとなった。帰ってきて、調べてみたら面白いことが分かった。
その杭は『柵』と書いて「しがらみ」と読むというのだ。水上から色々な向きで流れてくる流木の類を川と並行に向きを変えさせ川を支える柱への衝撃を無くすのが目的という。「柵」を今日では「さく」と読むのが一般的。しかし、古い読み方では「しがらみ」と読み、転じて今日では「人とのしがらみ」とか「世間とのしがらみ」の言葉が生まれたというのだ。川に設置された衝撃防止のために杭にしがらみつく様から今日使われている言葉が生まれたのだろうと思うと実に興味深い。「木除(きよ)け杭」と呼ばれている。
 さて、もう一つだけ紹介しよう。同じ、伊勢神宮に出かけて知った言葉がある。伊勢神宮では、お祓いの札を入れておく箱のことを「お祓い箱」と呼び、その中の札は毎年新しい札に取り替えられたという。それが転じて不要になったものを捨てる事を「お払い箱」と言うようになったらしい。
 普段聞きなれた言葉の本来の意味を探ると言葉の意外なルーツにたどりつくことがある。特に建築用語には数々ある。それは、建築が古来より人の暮らしに関連が深く、時の流れと共に言葉も変容変化してきたことが実感できる。(建築アトリエ・トレッペン代表・建築家)





下:うだつは上がらなくても・・  
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